クリスマスにお勧め「くるみ割り人形」DVDあれこれ

バレエファンの年末といえば「くるみ割り人形」!
が、これまた演出が様々であり、それぞれ一長一短という感じでしょうか。
わたしは大のボリショイ・バレエのファンで、ボリショイを観るために真冬のロシアへ行ったこともあるくらいです。
もちろん今年6月の来日公演では、各演目を1〜2回ずつキャスト違いで観ています(できれば全公演観たかった!)。
※2時間でフランス革命〜新演出「パリの炎」で集団の力と恐怖に戦慄を覚える
もくじ
1・ボリショイのユーリー・グリゴローヴィチ版(1987年・2010年)も良いけれど‥
ボリショイファンとしては、やはりグリゴローヴィチ版(上の写真左)を推したいところですが、珍しくこの演出はあまり好きになれず‥
が、この1987年版のマクシーモワ&ワシーリエフの伝説ペアはもう本当に素晴らしく、一見の価値があります!!
惜しむらくは映像がいまいちで、特に画面が暗いこと。
(上の写真のものと内容は同じだと思います。)
他にアルヒーポワ&ムハメドフのものも評価が高いようですが、まだ観たことがありません。
さて、最新のボリショイ2010年版、カプツォーワ&オフチャレンコも悪くありません。
カプツォーワは可憐で上品、オフチャレンコもなかなかの美形の王子といった風情で好感が持てます。
が、なんというか・・表面的でしょうか。
もちろん、「くるみ割り」は夢物語ですから表面的で結構という見方もあるでしょう。
それならば映像も美しく、「今」のボリショイが楽しめるのでお勧めです。
2・一推しは物語としての完成度が高い英国ロイヤルのピーター・ライト版(2000年)か
作品として好きなのは、英国ロイヤルバレエのピーター・ライト版2000年(上の写真右)です。
原作の不気味さ(原作者E.T.A.ホフマンは幻想文学作家で不気味なものが多いそう)を微かに漂わせつつも、実にすてきな少女の夢物語になっています。
しかも「ただの夢」で終わらず、現実の恋の始まりを予感させるようなラストも秀逸。
主役のコジョカルも可憐なだけではなく、一夜の夢で幼い少女から思春期の女性へと成長したのがわかる演技力もあります。
また、踊りの主役の「金平糖の精」は、本拠地ロンドンのバレエファンも絶賛していた吉田都さん!
(2010年にロンドン・ロイヤルオペラハウスでのボリショイバレエ公演を観に行ったとき、隣の英国紳士が絶賛してくれました・)
ピーター・ライト版はこの他に、1985年のロイヤルと、2006年のバーミンガム・ロイヤルバレエのものも観ましたが、わたしはこの2000年版が一番好きです。
3・白眉は3幕のアダージョ〜この音楽は大人になってこそ響くもの
チャイコフスキーのバレエ音楽の最高傑作は、やはり「白鳥の湖」ではないかしら。「くるみ」も楽しく聴けるのは良いところですが、ちょっと残念な気がしてしまいます。
でも、3幕パ・ド・ドゥのアダージョは素晴らしい。
単なる下降音階をこれほどドラマティックにできるのは、チャイコフスキーならではでしょう。
それは心の奥に潜む、言葉で表現しがたい「切なさ」を、容赦なく揺り動かしてくるよう‥
「子どものためのバレエ」とされがちですが、このアダージョは大人の音楽だと思います。
4・その他のお勧め「くるみ割り人形」DVD
上の写真の後ろ右、コチェトコワ主演のサンフランシスコ・バレエもなかなかお勧め。
また、今は手元にないのですが、マリインスキー・バレエ団のものも良いでしょう。
ラリッサ・レジュニナ主演のキーロフ・バレエ時代のものも、「正統派」という感じがして素敵ですが、わたしが好きなのは2007年の新演出のもの。
いえ、この新演出と新解釈が好きなわけではありません。面白いですが、ちょっと不気味すぎます。
特筆に値するのはレオニード・サラファーノフ演じる王子のヴァリアシオン、これはもう見事としか言えません。
その他、まだ観たことはないのですが、原作を離れた解釈のものではオーストラリア・バレエ団の演出や、マシュー・ボーン演出も気になります。
オペラも演劇もそうですが、バレエもまた、演出によって全然違う印象のものになるのが面白いところです。
もちろん実際に踊るダンサーによっても。
今日はクリスマスをきっかけに、本業を離れ、バレエの面白さを趣味の愛好者として書いてみました。
近日開催予定のイベント
午前10時〜12時 自由が丘「スタジオカムシア」にて ご参加費・5000円
1/20水晶七環演奏会
10時〜11時30分 自由が丘「スタジオカムシア」にて ご参加費・4000円
6/8クリスタルボウル・ヨーガ